2015年03月27日

寄稿「社内英語公用語化」への取り組みとその問題点〜多聴多読マガジン4月号別冊『英語スピーキングに強くなる』より−2−

 前回に引き続き、多聴多読マガジン4月号別冊『英語スピーキングに強くなる』に佐藤洋一氏より寄稿いただいた「社内英語公用語化」への取り組みとその問題点、についての掲載の2回目になります。グローバル人材育成の一助として、ご参考にしていただけましたら、と存じます。

(2)見解の一致の示し方の問題点

 これとは対照的に、見解の一致を示す際、日本人同士では「沈黙」を用いることがある。例えば、「それでは、本日提示されたプランで、今後事業展開を進めていくという形でよろしいですかね」のようにコンセンサス形成を図る際、日本人同 士でははっきりと「YES」を言わず、「沈黙」し、何も言わないことで一応の合意を示す場合がある。

 一方、外国籍の社員の場合、この「沈黙」が合意の意味になるかを頭ではわかっていても判断し難い。後で「自分はそんな決 定は聞いていない」と悶着を起こし、いわゆる「KY(空気が読めない)外国人社員」という扱いになってしまうことも少なくないという。

 グローバル化を目指して、英語を公用語としたはずが、「英単語を用いて日本語をしゃべっているだけ」で、いわゆる Japlish を公用語とするグローカル化を引き起こす結果となってしまっている場合が多いことは否めない。

 「自分も英語がペラペラ話せれば」、と夢見る日本人社員はとても多い。これからのグローバル化を見据えた企業の英語公用語化への取り組みは、このような 目標を現実にするための斬新的な取り組みとして評価できる側面も多い。しかしながら、日本人社員の英語力が向上し、英語を媒介としたビジネスコミュニケーションの機会が増えてくることに連れ、顕在化してきている問題もある。

 例えば今回の事例でもある通り、表面上は「英語をペラペラ話している 」ように見えても、実際には内容が伴わない、文字通りうすっ「ペラ」な英語を話している場合は少なくない。もちろん、たとえうすっ「ペラ」な英会話だとしても、そのレベルに到達するために、本人はかなりの努力をしたはずであり、この努力は賞 賛されるべきである。しかしながら、そのような表面的な英語力だけでは、グロ ーバル化時代を生き残るための鍵にはな らないという認識は持っておかなければ ならない。

 今後さらにグローバル化に拍車がかか るにつれ、「英語がしゃべれるようになる」ことから、外国籍社員にもしっかり伝わるような 、「 評価される英語 」に昇華する必要がある。

 その目標達成のためには、とにかくがむしゃらに英語を学習するのではなく、直面しているビジネスを考慮に入れて、努力の方向をより実りあるものにする必要がある。このような考え方は、English for Specific Purpose (ESP、特定の目的のための英語)とも言われる。プレゼンテーションや会議、電話、メールなど、スキル別での英語学 習ももちろん効果的だが、これからのグローバル化社会に求められる英語使用、特に以下の3つのポイントを踏まえる必要があるだろう。

(1)日本語と英語のロジック(論理展開) の違いをしっかりと意識し、「相手に伝わる」、かつ「評価される 」英 語を話す。

(2)コミュニケーション(特に情報伝達上)の問題が起こった際、問題解決に 取り組み、常に正しい軌道(on the right track)に戻るためのストラテ ジー(方略)を身につける。

(3)対立を所与のものと捉え、臆せず異 文化に対峙していくためのグローバ ル・マインドセットを養成するための異文化適応能力を身につける。

 以上の3点の中で、特に急務なのは(1)と(2)である。
 これらの能力は、自己学習を通して身につけるのは容易なことではない。より効果的な英語使用能力を育成するためには、企業英語研修のあり方も抜本的に見 直す必要がある。

 具体的にどのような項目、そしてどのような言語表現が必要であり、そのためにはどのようなカリキュラムを組む必要があるかについては、引き続き論じていくので、ぜひ参考にしていただきたい。
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
■■■執筆者プロフィール■■■

-1.jpg 佐藤洋一(さとう・よういち)
東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得満期修了退学。現在、青山学院大学、放送大学でも教鞭をとる。ビジネス現場での実践と、学術的な観点の両側面からグローバル時代のビジネスコミュニケーションのあり方を模索している。著書に『グローバルビジネス英会話Basic』(共著、アルク、2011年)、『グローバル化時代の外国語教育学研究』(共編著、MAYA consortium, 2014年)、最近の論文に“BELF in the Context of Globalization in Japan: A Challenge from Expanding Circle”(単著, 2015, KLA Journal Volume 2)など。2015 年からはコスモピアでも研修講師を担当。
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
posted by Paperback Writer at 23:54| Comment(0) | 日記