2015年06月10日

英語のロジックを意識する その2

 今回も引き続き、コスモピア研修講師でもある佐藤洋一氏からの英語でのビジネスコミュニケーションに関する「英語のロジックを意識する その2」をお届け致します。引き続きグローバル人材育成の一助として、ご参考にしていただけましたら、幸いです。

英語のロジックを意識する その2


 今回も引き続き、議論を一歩先に進める形で、英語のロジックを意識する必要性について論じる。

英語のロジックを展開する順序

 英語のロジックは、主に「意図→理由→結論」の順番で展開される。意図とは、自分の伝えたい話の大枠である。意図を先に述べる主な目的は、自分の話すないようを相手に聞きたいと思ってもらうためである。言い換えるならば、話の前置き、といったところだろう。次に、理由を述べる。主観的な意図とは違い、理由はどちらかというと客観的なデータに基づくものが多い。数値的なデータがある場合には、より説得力を持って伝える事が可能になる。また、自分自身の経験則なども理由として機能しうるが、その場合はできるだけ事細かに伝える練習が必要だ。そして、話の最後に持ってくるのが結論部だ。基本的には意図と同じ事が繰り返されるが、理由で提示したデータを基に、相手を説得するのがこの結論の役割である。

 したがって、先ほどの例では小倉の行動は、データや客観的な理由なしに、いきなり相手を感情だけで説得しようとしたように、ネイティブ側には映ったと解釈できる。ネイティブ側にしてみれば、この日本人の言語行動こそ、押しが強い外国人という印象として映っていたのは、驚きである。

 では、以上の英語らしいロジックを意識して、先ほどの会話をやり直してみよう。意図の部分は赤、理由は緑、結論は青で示してある。

Joe: So, we have come up with these three possibilities as alternative solutions of this issue. What do you think about them, Ogura-san? 
ジョー:(本件の代替的な解決法として、これらの三つの可能性を考えましたが、小倉さんはどう思われますが。) 
小倉: (意図)I think the third plan sounds excellent, because it looks the most feasible among them. (理由)Well, actually, we had a very similar financial problem before in our Shanghai branch office. In that situation, we implemented a plan that was very similar to your third alternative. As a result, we were able to solve the problem. So, (結論)That’s why I think the third plan will work well. What do you think, Joe-san?
(三番目の案がいいとわたしは思っています。というのも、この中では最もうまくいきそうなので。実は、上海支社でも同様の問題がありまして、そこであなたの三番目の代替案と似たようなプランを講じたことがありました。結果、問題を解決することができたのです。なので、三番目の案がうまくいくとわたしは思ったのです。どう思いますか、ジョーさん。)
Joe: Ah, that sounds interesting. Although the second one is also fairy practical to implement in cost-benefit wise, what we have to prioritize now is the feasibility of our action plan. Yeah, I agree with you, Ogura-san. Could you just elaborate on that a little bit, please? I want to know more about your idea.
ジョー: (それは興味深いですね。二番目も費用対効果で考えれば実用的ですが、今重要なのはこのアクションプランの実現可能性だと思います。あなたの意見に賛成です、小倉さん。先ほどの話をもっと詳しく教えてくださいませんか。あなたの考えをもっと知りたいので。)

 説明の手順としては以下の通りである。まず、自分が意図するところ(=三番目のプランがいいと「思っている」)を明確に伝える。次に、なぜそう思うのかを、客観的な事実(=以前上海支社でもこのような問題があり、解決した)を提示する。その上で、三番目が良いと思った旨を結論として「説得する」形で論を進めるとよい。また、小倉は発言の最後で“What do you think? (あなたはどう思いますか。)”と言っているのも、相手に好印象を与えている。自分の意見と相手の意見をすり合わせる形で、よりよい策を講じていこうとする、いわばコミュニケーションをしようとする姿勢 (Willingness to communicate)を相手に感じさせることに一役買っている。このため、ジョーも気持ち良く会話を続けることができている。最後に、「意図」、「理由」、「結論」を示すのに良く使われるビジネス英語の表現を幾つか提示しておくので、参考にしてほしい。

英語表現の具体例

「意図(intent)」を明確に示す
I think … (わたしは…だと思います。)
In my opinion, … (わたしの意見では…)
How about … ? (…はどうでしょうか。)

「理由 (reason)」を客観的に提示する
This is because … (というのは…だからです。)
As a matter of fact, … (実のところ…なのです。)
The data show that … (データによると… です)

「結論(conclusion)」を示して説得する
That’s why I think … (なので、わたしは…だとおもっています。)
In conclusion/Therefore/Henceforce, (結論として/ゆえに/したがって)
So, it makes more sense for us to do … , I think (わたしたちは…する方がもっと理にかなっていると、わたしは思うのです。)

 今回紹介した「英語のロジック」はあくまでも、英語でのビジネスコミュニケーションで相手を説得する際に必要な手順の一つである。日常会話などでこのような話し方を常に意識する必要はないが、会議中、プレゼン、交渉中などでは、よりよいコミュニケーションを実現するためにも是非意識しておきたい。

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■■■執筆者プロフィール■■■

-1.jpg 佐藤洋一(さとう・よういち)
 東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得満期修了退学。現  在、青山学院大学、放送大学でも教鞭をとる。ビジネス現場での実践 と、学術的な観点の両側面からグローバル時代のビジネスコミュニケ ーションのあり方を模索している。著書に『グローバルビジネス英会 話Basic』(共著、アルク、2011年)、『グローバル化時代の外国語 教育学研究』(共編著、MAYA consortium, 2014年)、最近の論文に “BELF in the Context of Globalization in Japan: A Challenge from Expanding Circle”(単著, 2015, KLA Journal Volume 2)など。2015 年からはコスモピアでも研修講師を担当。
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posted by Paperback Writer at 15:25| Comment(0) | 日記

2015年06月03日

英語のロジックを意識する その1

 今回は、多聴多読マガジン4月号別冊『英語スピーキングに強くなる』に寄稿いただいた佐藤洋一氏からの英語でのビジネスコミュニケーションに関する新しい内容をお届け致します。引き続きグローバル人材育成の一助として、ご参考にしていただけましたら、幸いです。

英語のロジックを意識する その1


 前回、評価される英語使用のためには、教科書の英語だけでは不安が残る旨を述べた。英語学習の際、意味や形式の学習もさる事ながら、ある言語表現が有する機能(pragmatic function)についても着目する必要性を論じた。今回は、それらを踏まえ、議論を一歩先に進める形で、英語のロジックを意識する必要性について論じる。

英語は本当に「結論」を先に言うのか

 英語という言語は、結論を先んじて述べる言語であるという見方が、日本人の認識の中では強い。しかしながら、実際に英語を使い環境に身をおいた事のある人であればわかると思うが、結論を先に述べると、他の人からの反感を買い、質問攻めにあう場合が往々にしてある。ここで、「やはり外国人は、自分の意見をしっかり持っているけど、ちょっと押しが強いな」と判断してしまうのはやや軽率である。

 実は、英語のロジックでは、必ずしも結論から先に述べるとは限らないのである。特に、会議やプレゼンなどで、評価される、尊敬を勝ち取れる、相手を納得させられる意見を述べられるようになりたいと思っている方の場合、この英語らしいロジックを意識することは極めて重要であると言っていい。

 英語のロジックを説明する前に、「押しの強い外国人」を引っ張り出してしまう、日本人の好ましくない英語使用を見てよう。

*アメリカ人社員のJoeが、アクションプランとして挙げた3つの代替案の候補について、日本人マネージャーの小倉に意見を求めている。

Joe: So, we have come up with these three possibilities as alternative solutions of this issue. What do you think about them, Ogura-san? 
ジョー:(本件の代替的な解決法として、これらの三つの可能性を考えましたが、小倉さんはどう思われますが。) 
小倉: Well, let's go with the third plan, because it looks the most feasible among them.
(そうですね、三番目のプランでいきましょう。最も現実的[うまくいきそう]に見えますので。)
Joe: Well, yeah. But, I don't think the third plan is necessarily the very best in terms of feasibility. I think the second one is also fairy practical to implement in cost-benefit wise, you know. Ah, can I just ask why you think the third one is the most feasible?
ジョー:(ええ、そうですね。でも、三番目のプランは必ずしも現実的であるとは限らないようにわたしは思います。費用対効果では、二番目のものが最も実行するのには向いていると思いますが。えっと、なぜ三番目が最もうまくいきそうだとお考えになるのかお伺いしてもいいですか。)

 これを見て、「ああ、よくある押しの強い外国人の話し方だ」と思った方は決して少なくないだろう。ビジネスの場面で英語を話す機会の多い方は、このような場面を何度も経験しているはずだ。しかしながら、これを、ただの押しの強い外国人の例として処理するのはいささか乱暴である。このような場面について、ネイティブ側はどう感じているのか、何人かの日本人とビジネス経験のあるネイティブの人に意見を求めてみたところ、次のような意見が圧倒的だった。

Well, actually, if I were Joe, I would be at a loss for what to do. The Japanese guy suddenly jumped into the conclusion without telling him any reasons. Also, I don't really understand what his intent is.
(実は、わたしがジョーの立場だったら、どうしていいかわからなくなると思います。この日本人の方は理由も伝えずに、突然結論に話が飛躍しました。また、彼が意図するところがわたしにはわかりずらいので。)

The Japanese guy’s saying confuses me. I can't tell whether it is just his intent or already conclusion.
(日本人の方がおっしゃったことで、わたしは混乱しています。議論の方向性を示されたのか、はたまた結論を仰りたいのか、いまいちわからなくて。)

 この二人の意見に共通して見られるのは、小倉の意図するところが見えず、混乱を隠せないということだ。日本人マネージャーである小倉は、おそらく「英語では結論から先述べる」という思い込みを強く持っていたのだろう。言うまでもないことだが、ビジネスコミュニケーションでは間違った思い込みが、時として思わぬ命取りになることがある。そして、このような場面は、英語によるビジネスを経験されたことのある方であれば、幾度となく経験していることだろう。このような問題を解決するために、「意図(intent)」と「結論(conclusion)」は英語ではわけて話すべし、というマインドセットをしっかり持っていることが鍵となる。

 今回紹介した「英語のロジック」はあくまでも、英語でのビジネスコミュニケーションで相手を説得する際に必要な手順の一つである。日常会話などでこのような話し方を常に意識する必要はないが、会議中、プレゼン、交渉中などでは、よりよいコミュニケーションを実現するためにも是非意識しておきたい。
次回は、英語のロジックを展開する順序について。

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■■■執筆者プロフィール■■■

-1.jpg 佐藤洋一(さとう・よういち)
 東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得満期修了退学。現  在、青山学院大学、放送大学でも教鞭をとる。ビジネス現場での実践 と、学術的な観点の両側面からグローバル時代のビジネスコミュニケ ーションのあり方を模索している。著書に『グローバルビジネス英会 話Basic』(共著、アルク、2011年)、『グローバル化時代の外国語 教育学研究』(共編著、MAYA consortium, 2014年)、最近の論文に “BELF in the Context of Globalization in Japan: A Challenge from Expanding Circle”(単著, 2015, KLA Journal Volume 2)など。2015 年からはコスモピアでも研修講師を担当。
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posted by Paperback Writer at 17:40| Comment(0) | 日記